中国の「コミュニティ食堂」世代を超えて広がる

2026年8月31日 - 社会福祉
2021年8月3日、上海のコミュニティ食堂で食事をする高齢者たち[写真/IC/China Daily]

高齢者向けに始まった食堂が、手頃で健康的な食事を提供する地域交流の場に

中国の上海市をはじめとする各都市で、地域住民に手頃な価格で食事を提供する「コミュニティ食堂」が広がっています。高齢者向けの福祉施策として始まった取り組みですが、現在では若い世代や家族連れも利用する、世代を超えた交流の場になっています。

上海だけで約500カ所

上海市内にはコミュニティ食堂が約500カ所あり、食堂では麺類や餃子だけでなく、白切鶏、甘酢あんのスペアリブ、魚のワインソース煮、蒸しスズキ、ヘチマと枝豆の炒め物、ニンニク風味のナス、豚肉入りヤマイモ炒め、ひき肉入りの辛い豆腐、麻婆豆腐など、家庭料理を中心とした30種類以上の料理を小皿で提供しています。

メニューは日替わりで、価格は1品当たり3~20元(約71~476円)です。3人家族でおよそ60元(約1,428円)あれば、十分な食事を楽しめるといいます。高齢者には10~20%の割引もあります。

項目内容
主な展開地域上海市をはじめとする中国各都市
上海市内の施設数約500カ所
料理の種類30種類以上の日替わりメニュー
価格帯1品3~20元(約71~476円)
高齢者向け支援10~20%割引、上海市では無料配食の申請も可能

高齢者支援から地域交流へ

コミュニティ食堂は、10年以上前に政府の補助を受けた高齢者向け事業として始まりました。栄養のある食事を高齢者に安く提供することが当初の目的でしたが、現在は高齢者だけでなく、健康志向を強める若い世代にも利用されています。一般の飲食店に比べて塩分や油分を控えた料理が多いことも、幅広い世代を引きつける理由の一つです。

高齢者専用の施設とは異なり、さまざまな年齢層が同じ空間で食事をするため、食堂には活気が生まれています。上海市内には、黄浦江や蘇州河沿いの景観を楽しめる場所、歴史的建築物を活用した施設、高級感のあるコーヒーバーを併設した施設もあります。一部は、街歩きの立ち寄り先としても注目されています。

高齢化社会への対応策

コミュニティ食堂は高齢化社会に対応する重要な社会政策でもあります。上海市では、戸籍を持つ住民の37.6%が60歳以上で、80歳以上の住民は90万人に上ります。その中には一人暮らしの高齢者も多く、手頃で健康的な食事の提供は、生活支援と孤立防止の両面で意味を持ちます。

上海市では食堂での食事提供に加え、高齢者が自宅への無料配食を申請できる制度も整えられています。欧米にも高齢者や住まいを失った人を支援する慈善活動はあるものの、政府が補助するコミュニティ食堂が中国の独自の取り組みとして、数百都市に広がっていると指摘しています。

中国の60歳以上人口は3億2,300万人

中国国家統計局によると、2025年末時点で中国の60歳以上人口は3億2,300万人に達しました。 高齢化が進むなか、安価で栄養価の高い食事をどのように提供するかは、政府が継続して取り組むべき課題となっています。

上海市の平均寿命は84歳で、中国全体の平均である79歳を上回り、世界の先進地域と同水準にあります。論考は、コミュニティ食堂の運営や小規模公園の整備など、住民が暮らしやすい地域づくりを進める上海市の取り組みを評価しています。

コミュニティ食堂は、高齢者の食生活を支える福祉施設にとどまらず、世代間交流や地域のにぎわいを生み出すインフラへと役割を広げています。高齢化社会が深刻化するなか、食事の手頃な価格と健康、交流を同時に実現する仕組みとして、今後も注目を集めそうです。

[1] Community canteens a boon across generations – China Daily

※円換算は、2026年8月31日現在のXeによるミッドマーケットレート「1人民元=23.7917円」(8月30日21時36分UTC時点 )を使用し、1円未満を四捨五入しています。

      

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