数学界のノーベル賞「フィールズ賞」に初の中国籍数学者2名が選出、女性として史上3人目の受賞も

2026年7月29日 - 未分類

2026年7月23日、フィラデルフィアで開催された国際数学者会議(ICM)において、数学界で最も権威ある賞の一つであるフィールズ賞の受賞者が発表されました。今年は、王虹(ホン・ワン)氏、鄧煜(ユー・デン)氏、Jacob Tsimerman氏、John Pardon氏の4名が選ばれました。特に注目すべきは、王虹氏と鄧煜氏が中国籍の数学者として初めてフィールズ賞を受賞した点です。また、王虹氏は女性として史上3人目の受賞者となり、数学界に新たな歴史を刻みました 。

Erin Blewett/AFP/Getty Images

王虹氏の業績:日本発の難問「掛谷予想」を解決

王虹氏は35歳、中国の広西チワン族自治区桂林市出身で、ニューヨーク大学クーラント数理科学研究所とフランス高等科学研究所(IHES)の教授を務めています 。彼女は、ジョシュア・ザール氏との共同研究により、100年以上にわたり未解決であった「3次元掛谷予想(Kakeya Conjecture)」を解決したことで高く評価されています 。

掛谷予想は、1917年に日本の数学者・掛谷宗一氏が提唱した「平面上で長さ1の針を180度回転させるために必要な最小の面積を持つ領域は何か」という問題に端を発しています。この問題は、その後、より高次元の空間における幾何学的測度論の難問へと発展しました。王氏らの研究は、3次元空間における掛谷集合が「小さすぎない」ことを厳密に証明し、医療画像処理、ノイズキャンセリング、ワイヤレス信号の最適化といった多岐にわたる分野への応用が期待されています。

王氏は幼少期から数学に非凡な才能を示し、6歳の時には父親よりも早く図形パズルを解いたといいます。彼女は数学の「不変性」に魅了され、一度証明された定理は誰にも否定されないという点に大きな魅力を感じていたそうです。

鄧煜氏の業績:物理と数学の架け橋

鄧煜氏は37歳、中国の広東省深圳市出身で、シカゴ大学の教授を務めています 。彼の受賞は、1900年にドイツの数学者ダフィット・ヒルベルトが提示した「ヒルベルトの第6問題」の核心部分に迫る画期的な業績によるものです。

ヒルベルトの第6問題は、物理学の公理化を目指すもので、特にミクロな粒子運動を記述するニュートン力学から、マクロなガスの挙動を記述するボルツマン方程式を数学的に厳密に導き出すという長年の課題がありました。鄧氏は、この間のギャップを埋める重要な証明に成功し、物理学と数学の間の架け橋を築きました。

また、鄧氏は「波の乱流理論(Wave Turbulence Theory)」の研究でも知られています。これは、海の波や量子系の波など、複雑な波のシステムにおけるエネルギーの拡散を予測する統計的モデルに数学的基礎を与えるものです。

彼の研究にはユニークなエピソードもあります。2021年、彼は韓国風フライドチキン店で食事中に、複雑な問題をより小さく管理しやすい部分に分割して解決するアイデアを思いついたと語っています 。鄧氏は幼い頃、プロの囲碁棋士を目指していた時期もあり、2006年には国際数学オリンピックで金メダルを獲得するなど、早くからその才能を開花させていました。

数学界の新たな歴史:多様性と次世代への影響

今回のフィールズ賞は、中国籍の数学者が初めて受賞しただけでなく、同じ年に2名が選出されるという快挙となりました。中国国内では「数学の強国」への大きな一歩として熱狂的に報じられており、「四常(数学大国4カ国)」から「五常(5カ国目)」への仲間入りと評する声も聞かれます。

また、王虹氏が女性として史上3人目の受賞者となったことは、数学界における多様性の推進においても大きな意味を持ちます。国際数学連合(IMU)のウルリケ・ティルマン副会長は、「女性が最高レベルで貢献することが当たり前になる、素晴らしい一歩です」とコメントし、女性数学者の活躍が今後さらに進むことへの期待を表明しています。

王虹氏と鄧煜氏の功績は、数学の未解決問題に新たな光を当てるだけでなく、次世代の数学者たち、特に中国やアジアの若者たちに大きなインスピレーションを与えることでしょう。彼らの研究は、基礎科学の発展が私たちの日常生活にどのように貢献しうるかを示す好例であり、今後のさらなる活躍が期待されます。

      

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