中国と欧州の自動車産業、新たな協力関係を構築:吉利汽車の戦略的展開
中国の自動車メーカーである吉利汽車(Geely)は、欧州市場での存在感を着実に高めており、中国と欧州の自動車産業における協力関係が深化しています。特に新エネルギー車(NEV)分野での中国企業の躍進は目覚ましく、欧州市場の認識も変化しつつあります。

吉利汽車の欧州市場戦略
吉利汽車は、2025年10月に初のモデル「Geely EX5」を英国市場に投入し、欧州での事業展開を本格化させました。このモデルは、約3万ユーロという価格帯で、先進的なNEV技術へのアクセスを広げることを目指しています。
吉利汽車の欧州進出は、2010年のボルボ・カーズ(Volvo Cars)買収に遡ります。この買収は、中国自動車メーカーによる初の主要な海外企業買収として注目を集めました。買収後もボルボはブランドアイデンティティを維持しつつ、製品ラインナップとグローバル展開を拡大しました。
吉利汽車インターナショナルCEOのAlex Nan氏は、「吉利の40年の歴史のうち、半分は欧州での基盤作りに費やしてきた」と述べ、欧州市場の規制システムや消費者の期待に対する深い理解が同社の強みであると強調しています。また、スウェーデンに設立された「China-Europe Vehicle Technology (CEVT)」センターは、エンジニアリングのハブとして機能しています。
中国NEV市場の驚異的な成長
中国のNEV市場は急速な成長を遂げており、2025年には国内総生産台数が1,600万台を突破しました。また、同年にはEV輸出台数が260万台に達し、その価値は前年比43%増の696億ドルに上りました。これらの輸出は66カ国に広がり、欧州が主要な輸出先の一つとなっています。
欧州市場の認識変化
かつて欧州市場では、中国車に対して懐疑的な見方が存在しましたが、現在その認識は急速に変化しています。ドイツのフリートマネージャー(法人車両管理者)を対象とした調査では、回答者の80%が「中国車はすでに欧州の伝統的なブランドと同等かそれ以上である」と評価しており、ほぼ同数の管理者が今後3年以内に中国車をフリートに導入する意向を示しています。
Zeekr Europe CEOのLothar Schupet氏は、自動車産業が電動化とソフトウェア定義車両(SDV)によって変革期を迎えていると指摘し、「Zeekrは『欧州の魂』を持って運営されている」と述べています。スウェーデンのゴテボリにデザインセンターを設け、欧州市場のニーズに合わせた車両開発を行っていることも、その一例です。
今後の展望
Alex Nan氏は、中国のNEV分野での台頭は、政府の産業政策による支援が大きな要因であると分析しています。また、中国の強固なサプライチェーンエコシステム、優れたエンジニアリング人材、そして継続的な改善文化が、イノベーションと競争力の根源にあると指摘しました。
中国と欧州の自動車産業は、もはや一方的な影響関係ではなく、技術、アイデア、そして野心の双方向の交流へと進化しています。吉利汽車の戦略的な展開は、この新たな時代における協力関係の成功モデルの一つとなるでしょう。
