アリババ、エージェント型AI「Qwen3.5」を発表:DeepSeekに先駆け中国AI競争を加速
中国のテクノロジー大手アリババグループは、2026年2月16日、主力AIモデル「Qwen(通義千問)」シリーズの最新版「Qwen3.5」を発表いたしました。この発表は、競合であるDeepSeekが次期AIモデルを数日中に公開すると予想される直前に行われ、中国におけるAI開発競争の激化を明確に示しています 。

「エージェント型AI」への進化と驚異的な性能向上
Qwen3.5の最大の特徴は、単にテキストを生成するだけでなく、ユーザーに代わって複雑なタスクを自律的に実行できる「エージェント型AI(Agentic AI)」としての能力を強化した点にあります。これにより、Qwen3.5は、より高度な推論能力、長文のコンテキスト処理、そしてテキスト、画像、動画といった異なる形式の情報を横断的に理解するマルチモーダル能力を向上させています 。
アリババは、Qwen3.5が前モデルと比較して、利用コストを60%削減し、大規模なワークロードの処理能力を8倍に向上させたと発表しています 。これは、企業がAIエージェントを継続的に利用する際のコストを大幅に引き下げる可能性を秘めており、例えば年間20万ドル以上かかっていたAIエージェントの運用コストが、1万ドル程度で済むようになるという試算も出ています 。
エージェント型AIとは?
エージェント型AIとは、従来のAIが与えられた指示に基づいて情報を生成する受動的な役割に留まっていたのに対し、自ら目標を設定し、計画を立て、ツールを使いこなし、タスクを完遂する能力を持つAIを指します。例えば、旅行の計画を立てる際、従来のAIは質問に答えるだけでしたが、エージェント型AIは航空券の予約サイトを検索し、ホテルの空室状況を確認し、最適な旅程を提案するといった一連の行動を自律的に行うことが期待されています。
DeepSeekとの熾烈な競争:AI競争の新たな局面
今回のQwen3.5の発表は、その性能向上だけでなく、発表のタイミングにおいても戦略的な意味合いが強いと見られています。2025年には、DeepSeekがコスト効率に優れ、高性能なAIモデルを市場に投入し、中国のAI市場に大きな影響を与えました 。DeepSeekの次期モデルのリリースが迫る中、アリババはQwen3.5を投入することで、市場における主導権を維持しようとしています。
中国のAI競争は、単なる「チャットボットの性能」を競う段階から、企業のクラウドインフラやビジネスサービス、Eコマースプラットフォームといった広範なエコシステムにAIをいかに深く統合し、「インフラとしてのAI」の地位を確立するかという、より本質的な競争へとシフトしています 。アリババのQwenは、同社のクラウドコンピューティングからエンタープライズサービス、コマースプラットフォームに至るまで、幅広いインフラに直接組み込まれており、この点で構造的な優位性を持っています 。
競合他社も手をこまねいているわけではありません。ByteDanceは「Doubao(豆包)」をコンテンツおよび生産性エコシステムに深く浸透させ、Tencentも企業向けソフトウェアやソーシャルインフラにAIを組み込む動きを見せています 。
今後の展望:AIが社会インフラとなる未来
アリババのQwen3.5の登場は、中国のAI技術が急速に進化し、実用化の段階へと移行していることを示しています。AIが単なるツールではなく、私たちの生活やビジネスを支える基盤となる「社会インフラ」としての役割を果たす未来が、すぐそこまで来ているのかもしれません。中国のAI企業間の競争は、今後も技術革新を加速させ、世界全体のAI発展に大きな影響を与えることでしょう。
