「琴坂コンサートin宇治 興聖寺」が仏徳山興聖寺(大書院)で開催 

(株)メイブリッジ・インターナショナルが主催する「琴坂コンサ-トin宇治興聖寺」が

5月27日、28日に各日2回公演、計4回公演で京都府宇治市の曹洞宗仏徳山興聖寺(大書院)で開催された。規模は小さめだが、日本独特の文化的雰囲気の中、洗練された中国伝統楽器の古筝と琵琶が奏でる「琴坂コンサート」は、日本各地から集まった観客を魅了した。

中日新報社編集部の報道筋によると、27日の第一部の演奏会は、来場者45人が興聖寺大書院に着席した後、13時から始まり主催側の彭奕漫氏より昨年コロナが終息に向かう中で開催したコンサートがとても好評を得た為、本年も再び開催する運びとなった旨の説明がなされた。その後、中国の古筝演奏家・伍芳さんの演奏が始まった。彼女自身が作曲した「初恋」「琴坂~KOTOZAKA ~」の独奏は会場に響き渡り、古い禅寺の美しい庭の横で、非日常的な芸術的感情を共有する時間となった。

紅楼夢の主題曲『枉凝眉』を演奏する前に、伍芳さんは林黛玉と賈宝玉の愛の物語やこの曲がもともと持っている美しさと哀嘆の歴史的背景を強調し語った。それを聞いた観客はきっとこの曲に対しての輪郭のようなものを感じ、聴くための心の準備ができたことであろう。その後、伍芳さんが調弦をし終えて『枉凝眉』を弾き始めた瞬間、会場にいる全ての観客が息を止めたかのように静まり、音楽と共に紅楼夢のストーリーに引き込まれて行った。ドラマの主人公や役柄になった観客が、心で感じ、古箏の奏でる美しい音楽の中を旅しているかの様だった。

山からは心地良いそよ風が大書院に吹き込み、庭では小鳥が木の枝にとまって見守り、鯉は石畳の橋の下に隠れ尾鰭を揺らし泳いでいる。蛙は時より音楽に合わせて声を出し、自然豊かな中で奏でられる弦とのコラボレーションは、時間と空間を越え、この世ではなく別世界にいるようである。

また、伍芳さんは演奏前の紹介から演奏後のまとめまで、彼女の流暢な日本語とユーモアあふれる話しに客席からは何回も笑い声や拍手が起った。

ゲストで登場した中国琵琶演奏家の葉衛陽さんは、古曲「龍船」を独奏し、この曲にある中国琵琶の独特な奏法で色んな音色を楽しませてくれた。また、演奏後に中国琵琶の特徴や演奏方法についての説明を初めて聞く方も多く、話しに大きく頷く人も多かった。その後、伍芳さんと「春江花月夜」を共演し、演奏が終わるとその素晴らしさに感動し観客席からの拍手は鳴り止むことが無かった。

最後の演奏曲「夢」が終わり、アンコール曲の「七輪の蓮の花」を二人で合奏し、伍芳さんは歌も披露した。観客全員がプログラムに書かれた中国語のふりがなをなぞって、七色の蓮の花が咲くかのように合唱した。リハーサルもしていない合唱が、整然としたハーモニーとなり大書院に満ち溢れ、池や庭園を通り超えて、真っ青な空へと飛んで行った。

アンコール曲も終わり、二人の演奏者は鳴りやまない拍手の中で何回も深く礼を述べているにも関わらず、誰ひとり席から立ち去ろうとはせず、全員が落ち着いて座り拍手し続けている。この「琴坂コンサート」は観客数こそ少ないが、絵にも描くことができそうな空間での非常に特別な演奏会であることを感じた。

正直に言うと、日本で31年間新聞・メディアに携わってきて、いろんなコンサートを何度も招かれて取材や、鑑賞したりしてきたが、これほど全曲が終わっても終わりがないような場面を経験したことはない気がする。多くの文化活働に関わる度に教わることは多く、今日の「編集日誌」では、「勉強しました」だけでは、この1時間半の鑑賞感想文やインタビュー感想文をカバーすることができない。

今回の演奏会の所在地である京都府宇治市の「曹洞宗仏徳山興聖寺(大書院)」の淵源は1233年にさかのぼって、日本の僧希玄道元は南宋に入り、中国禅宗の古寺を歴訪した後、曹洞宗第十三代祖如浄に師事し、曹洞宗の禅法と法衣を受納しました。三年後に日本に戻って、曹洞宗を伝えました。中国から帰国した道元禅師が伏見深草に開いた日本最初の禅宗寺院であり、現在日本全国に14,000以上ある曹洞宗脈系の中で最古の道場であるとされている。

在日中国人演奏家伍芳さんと葉衛陽さんのお二人は、長年にわたって日本各地で日中文化交流活動をしてきたアーティストであり、伍芳さんは、上海の出身で、9歳で古筝を習い、1990年に上海音楽学校を卒業し、同年に来日をした。「徹子の部屋」などのテレビ番組にも出演し、元皇太子様、雅子様の前での御前演奏もした。葉衛陽さんは、1988年に安徽師範大学音楽学部琵琶専攻を卒業、92年に来日し、様々な受賞経験がある。現在、日本中華文学芸術家連合会の会長を務めている。

また、来年この興聖寺で「琴坂コンサート」が開催されることが待ち遠しい。

中日新報新聞社 孫莉