高齢者10万人以上のネット利用時間が1日10時間以上 中国

これまでなら、子供がネット中毒にならないか、親が心配するというのが一般的だったが、今やその立場は逆転し、ネット中毒の親のことを心配し、頭を悩ませるという若者が増えている。

統計によると、中国の60歳以上の高齢者のインターネット普及率は38.6%。うち10万人以上のネット利用時間が1日当たり10時間を超えており、夜更かししてゲームをしたり、料理をしながら動画を見たり、ネットで買い物をしまくったりしているのだ。

高齢男性が「ワンボタン」でタクシー

ネットで購入後の返品操作も簡単に

政策の奨励の下、多くのインターネット企業がアプリなどを高齢者が使いやすいようにアップデートしており、それらはデジタルハードウェアやタクシー利用、ネットショッピングなど多くの分野をカバーし、多くの高齢者の生活がより便利になっている。

上海・曹楊新村に住む80代の男性・王さんは、以前は外出する際、いつも子供にスマホでタクシーを呼んでもらっていた。しかし、最近は自分で「ワンボタン」でタクシーを呼べるようになった。

高齢者向けに設計された「ワンボタン配車」サービスプラットフォームでは、「顔認証配車」のボタンを押し、顔認証、権限授与を済ませるだけで、タクシーを呼ぶことができ、高齢者にとっては非常に便利なサービスとなっている。

高齢女性の殷さんはネットショッピングが大好きだ。今年6月18日のネット通販セールイベント期間中、ECサイト・京東は、商品の交換や返品の操作が非常に簡単な、高齢者向けのサービスを打ち出した。

中国工業・情報化部(省)がスタートさせた高齢者向けのインターネット応用やバリアフリーアップデートなどのキャンペーンの実施が加速しており、その内容は、大画面のスマートデバイスや、大きな文字による表示、簡単な操作方法などを特徴としている。

1日中スマホをいじる「ネット中毒」の高齢者に頭抱える若者たち

より多くの高齢者がインターネットを便利に利用できるようになっている一方で、一部の高齢者が「ネット中毒」になり、子供たちが頭を抱えるという新たな問題も起きている。

甘粛省蘭州市の女性・褚さん(90)は、自称「ネット中毒」。インターネット利用を覚えてからというもの、ネットショッピングやデリバリー注文、動画視聴が毎日の日課になったといい、「ネットショッピングで買い過ぎたものは、友人にあげている。食事をする時間が少なくなったとしても、まずスマホを見ないと落ち着かない」と話す。褚さんのようにスマホをいじっている時間がとても多いと話す高齢者は少なくない。

中国工業・情報化部情報通信経済専門家委員会の委員である劉興亮氏は、「ショート動画は手軽で、分かりやすいため、中年・高齢者のインターネットデビュー、インターネット利用を加速させている。若者と比べると、インターネットプラットフォームは、高齢者に長時間利用してもらうよう取り込むほうが簡単」との見方を示す。

以前、インターネット時代に取り残され、「デジタル難民」になっているという報道も多かった高齢者が、なぜ突然「ネット中毒」になっているのか?

実際には、一部の高齢者が「デジタル難民」から、突然「ネット中毒」に変わったことには原因がある。ここ数年、デジタル技術の生活の分野での応用が進み、インターネットを苦手としていた高齢者が「時代に取り残された」と感じ、積極的にそれを受け入れ、利用することで、自分の社会的立場を保ち、時代に溶け込もうとしているからだ。また、高齢者は退職後、ワンパターンな生活を送りがちで、充実した暮らしをするために、華やかなインターネットの世界へと飛び込んでいるともいえる。また、脳の構造や機能が低下するにつれ、高齢者は自分の感情を制御する能力も低下するため、子供のように、自制が利かなくなり、インターネットの世界にのめり込み、「ネット中毒」となってしまうということも否めない。

「インターネット」というハードルを超え、インターネット時代について行くことができているということは、高齢者が生活を楽しみたいという気持ちの表れであり、社会が進歩していることも反映している。しかし、何事にも「度」があり、高齢者が夢中になりすぎて、「ネット中毒」になり、睡眠や健康などに悪影響を及ぼしているのであれば、益より害のほうが大きくなってしまう。

ある調査によると、高齢者がスマホに依存するのは、普段の生活において関心を払ってくれる人がいないことや、心の拠り所が不足していることと関係がある。そのため、「ネット中毒」の高齢者の家族は成り行きに任せてはいけない。若者は高齢者がデジタルライフの「主役」となるようサポートするだけでなく、正しくインターネットを利用できるよう全力でサポートし、時間を割いて、高齢者と心のこもったコミュニケーションを図るようにしなければならない。

また、高齢者自身も、無制限にインターネットを利用していると、精神的な健康や生理的な健康に有害無益であることを認識しなければならない。そして、コミュニティに溶け込み、近所の人達とできるだけ交流し、健康的で有益な趣味を見つけて、寂しさを解消するようにしなければならない。現実の生活において感じることのできるあたたかさや喜びこそが、本当に心を満足させてくれるものであるはずだからだ。(編集KN)

「人民網日本語版」2021年7月20日