私のみた「両会」——中国駐大阪総領事館張玉萍
私のみた「両会」——中国駐大阪総領事館張玉萍
華僑同胞の皆様
春暖の候、皆様におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し
上げます。
これまで長期にわたり、大阪総領事館ならびに私自身にもご理解とご
支援を賜りましたことを御礼申し上げます。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、皆様との対面交流の減少を
余儀なくされましたが、さいわいオンラインでお互いの意思疎通・心の
交流を相変わらず行えています。中国の熟語では「書信伝情」「見字如
面」といわれたように、今回は、この春爛漫の季節に、目下中国でもっ
とも話題になった 2021 年中国の「両会(全国人民代表大会、全国政治協
商会議)」をめぐり、こうしたお手紙の形で私の気持ちと感想をお伝え
したく筆をとりました。
その一 梅花の香、苦寒よりきたる
「両会」の開催はわが国の発展に影響を及ぼすばかりでなく、中国の
人々にも深く関わっています。今回、「両会」が成功裏に開催できたこ
とも、「中国がコロナウイルスに打ち勝ったシンボルである」と、多く
の海外メディアから称賛されました。これは、中国共産党の担うべき使
命と責任、中国人民による貢献と犠牲の賜ものであり、試練に耐え、苦
難を乗り越えてはじめて実現できたものだということを忘れてはいけま
せん。そういう意味で、今年の「両会」は、たんなる政治集会ではなく、
これまでにおさめた多くの成果を示す一方、中華民族の風格を見せ、ま
た気持ちを奮いたたせるチャンスでもあり、人々を励ます特別な意義を
持っていると思っています。
その二 長風、浪を破るにかならず時有り
2021 年は、中国共産党創立 100 周年であり、また、社会主義現代化国
家の全面的建設の新たな征途につくスタート時点でもあり、さらに第 14
次 5 ヵ年計画の最初の年でもあります。この節目の年に開催された「両
会」は大変特別な意義を持っています。わが国は、変わりゆく時代が与
えてくれたチャンスをつかんだ一方、政治・経済・パブリックにおける
危機管理などの分野において厳しい試練にも直面しています。今回の「両
会」は、小康社会の全面的完成の決勝段階における決定的な成果を見せ
ると同時に、新時代に向けて「発展+」というキーワードも打ち出した
ことで、「新たな発展段階に立脚し、新たな発展理念を徹底し、新たな
発展の形を構築する」という主軸を明らかにしたうえ、市場潜在力の開
拓、開放水準の向上、科学技術・イノベーション、グリーン経済などと
いった重点分野において具体案を策定し、大きな目標を定めました。「両
会」は自信と誇りをもって、中国の方針、知恵と決意を世界に伝えよう
としています。
その三 百川、東のかた海に到る
中国はいかに世界と共存していくか。これは世界中でもっとも注目さ
れている話題でしょう。今回の「両会」においては、「一帯一路」をめ
ぐる運命共同体の構築が提唱される一方、ワクチンに民族主義を持ち込
ませず、先進国と発展途上国との間で免疫格差が生じぬよう励み、さら
に、「国すら愛せない者には、香港を愛するなど語る資格はない」とき
っぱりと言い切る勇気をみせ、諸外国に対し「美顔カメラ」も「グレー・ブ
ラックレンズ」もつけず中国を理性的に客観視するよう求めるなど、新時
代における中国の外交態度を明らかにしています。私が新時代の中国外
交をキーワードにまとめるなら、尊敬と平等、結束と協力、開放と包容、
責任感と確固不動そのものになるでしょう。
王毅国務委員兼外交部長は記者会見で「新たな発展段階に入った中国
は、まるで新しくアップグレードされた高速列車のようだ。」と述べた
ように、中国はオープンな態度で、世界に発展のチャンスを与えようと
しています。しかし一方で、中国は何者にも左右されず、既定の発展方
向をしっかり貫いていくものだと信じております。
その四 一枝一葉には情が込められる
「民生保障」は常に「両会」において決して見逃せないホットな話題
であり、またもっとも温かみ感じさせる見所の一つでもあります。中国
の国内については、一番注目すべきは貧困脱却です。私が先日日本の新
聞紙に発表させていただいた「中国の貧困脱却は誰のためか」という署
名記事のなかでも触れたように、中国での貧困脱却は決してパフォーマ
ンスのようなものではなく、目で見えて手で触れられる確実な民生保障
だということです。同記事と一緒に載せていた生活の重さを背負いなが
らも未来への希望を抱く母親の姿の写真からさまざまな感情を感じたよ
うに、人々を貧しさから救い出し、不自由のない生活を送らせる、その
背後にある物語も目の前にみえた現実も、みな真実であり決して嘘は語
りません。先日北京で開かれた貧困脱却表彰大会に、受賞代表の一人が
その場で自らの経験を語り、「この身で体験した貧困脱却によって、幸
運にも歴史的変遷に立ち会えた。」と述べました。また、一部の国と政
治家から悪意をもって騒がれた新疆についても、経済成長や平均寿命の
増加から中国の民生と人権事業の確実な進歩が見えるはずです。
海外にいる中国同胞に関しても、「両会」から多くの「グッドニュー
ス」が伝わっています。今年の 5 月に「中国領事アプリ」をリリースし、
科学技術を生かした「クラウドサービス」を提供することになりました。
これによってスマートフォンやインターネットを通してオンラインで在
外公館につながり、窓口に立ち寄らなくても、24 時間海外在住の中国人
向け旅券・査証及び領事保護のサービスを受けられるようになります。
この一連の措置は、国民一人一人への配慮から考案されたものであり、
まさに「外交は民のためである」という理念を貫いています。そのほか、
海外在住の中国人のコロナワクチン接種をサポートする「春苗行動」や、
華僑の権利をよりよく守るための法律制定など、中国政府は海外同胞の
ことをつねに念頭に置いています。海外同胞の皆様は、中国の発展と中
華民族の復興において必要不可欠な力であると深く実感しています。わ
れわれ総領事館は皆様と祖国をつなぐ絆であり、皆様の海外にある「実
家」でもあります。これから、皆様によりよいサービスとさらなる便宜
を図っていきたいと思います。皆様におかれましても、故郷を愛し、国
を愛する伝統を受け継ぎ、引き続き祖国と民族のさらなる発展にお力を
お借りできればと思います。
「両会」は幕を下ろしましたが、中国発展の物語はまだまだ続いてい
ます。今日の中国は「二つの百年」という歴史的な交差点に立ち、新し
い道を切り開こうとしています。「未来図を手に握り、前進の号令がか
かっている。道のりは遠くも、ただ奮闘あるのみ。」
「両会」に対する受け止め方は、十人十色ではありますが、中国人な
ら、だれもが心の中に同じ「中国夢」を抱いているに間違いありません。
その夢の実現に向かって、一緒に努力しようではありませんか。