シャオミ(Xiaomi)新型SUV「SkyNomad」 床暖房やポップアップルーフで欧米勢に挑戦
シャオミ(Xiaomi)傘下のXiaomi Autoは9月7日、5人乗りと7人乗りをそろえる新型SUV「SkyNomad(スカイノマド)」シリーズを中国で発表しました。価格は20万9900元から29万9900元で、日本円に単純換算すると約490万〜705万円です。床暖房やプロジェクター、冷蔵庫、回転式シートなどを備え、価格を抑えながら高級SUV並みの快適性を狙います。

床暖房やポップアップルーフといった目を引く装備だけでなく、座席を動かして車内の使い方を変える発想と、発電専用エンジンによる長距離対応を低価格帯に持ち込んだことが、SkyNomadの特徴です。シャオミがスマートフォンで実現した「高機能を比較的手頃な価格で提供する」戦略を自動車でも再現できるか。中国市場での販売実績と、将来の海外展開が注目されます。
5人乗りと7人乗りの4モデル
SkyNomadは、5人乗りの「N70 Pro」と四輪駆動の「N70 Max」、7人乗りの「N90 Max」、そしてキャンピングカーのような「N90 Max Studio」の4モデルで構成されます。中国での公式価格は、N70 Proが20万9900元、N70 Maxが23万9900元、N90 Maxが26万9900元、N90 Max Studioが29万9900元です。
最上位のN90 Max Studioは、電動でせり上がるルーフを備えます。2列目のシートはボタン操作で約30秒でベッドに変わり、車内には床暖房とプロジェクター、30インチのスクリーンを設置できます。シャオミは、移動手段だけでなく、仕事や休息にも使える「移動する個人空間」と位置づけています。
標準的なN90 Maxも、2列目を含めた4席をゼログラビティ仕様にでき、前席を180度回転させて後席と向かい合わせるレイアウトに対応します。テーブルを組み合わせれば、車内をラウンジや簡易オフィスのように使える設計です。N70もフラットな床と長いスライドレールを採用し、座席を移動させて荷室や後席の空間を組み替えられます。
エンジンは発電専用、航続距離は最大1461キロ
SkyNomadは、エンジンで直接タイヤを駆動するのではなく、エンジンを発電専用に使うレンジエクステンダー方式を採用します。1.5リッターのターボエンジンで発電し、バッテリーと電気モーターで走行する仕組みです。中国の自動車メディアCarNewsChinaによると、発電用エンジンの最大出力は112キロワットで、92、95、98オクタンのガソリンに対応します。
N70 Proは52kWhのリン酸鉄リチウム電池を搭載し、中国のCLTC基準で電気だけなら351キロ、総合航続距離は最大1351キロです。四輪駆動のN70 Maxは76kWhの三元系リチウム電池を採用し、電気だけで505キロ、総合で1461キロの航続距離をうたいます。20%から80%までの充電時間は最短18分です。
ただし、CLTCは実際の走行条件より長い数値が出やすい試験基準です。実走行での距離は、速度、気温、乗員数、荷物、空調の使用状況などによって変わります。航続距離の数字は、欧米のEPA基準などと単純に比較できない点に注意が必要です。
LiDARとNvidia製チップも搭載
運転支援では、LiDARや高解像度カメラを使い、Nvidiaの「Thor」系チップを採用します。CarNewsChinaは、同チップの演算性能を最大700TOPSと報じています。 シャオミは音声操作や車内機器の連携も重視しており、25スピーカー、7.1.4チャンネル構成、最大4890ワットの音響システムをN70 Maxに用意します。
このほか、車載冷蔵庫やマッサージ機能付きシート、携帯電話網を利用した車両間通信なども設定されます。シャオミのスマートフォンや家電で培ったソフトウェアと機器連携を、自動車の商品価値に結びつけようとする狙いが見えます。
中国EV市場での競争、欧州進出が次の焦点
シャオミの新型SUV「SkyNomad」が、発売初月で7万件を超えるキャンセル不可の注文を獲得したことが好感され、香港市場においては同社の株価が9.2%急騰しました。中国の競争が激しい電気自動車(EV)市場において、価格競争の圧力や納車台数の減少といった逆風が吹く中、この旺盛な需要が同社にとって追い風となっています。
シャオミは2024年に初のEV「SU7」を投入し、2025年には2車種目の電動SUV「YU7」を発表しました。YU7は中国での発売に向けて価格発表と受注開始が注目されるモデルとなっていました。 SkyNomadはこうしたセダンと純電動SUVに続く、より大きく用途の広い車種です。
中国では、理想汽車(Li Auto)、Aito、BYD、Denza、Zeekrなどが、レンジエクステンダー車や大型SUVの市場で競い合っています。CarNewsChinaは、SkyNomadが快適装備と価格、電動走行距離を武器にする一方、中国でレンジエクステンダー車の市場シェアが縮小している点を課題として挙げています。
SkyNomadは7万台超の確定注文は、こうした逆風の中で投資家に好材料と受け止められました。ただしシャオミが2025年に発売したYU7は、発売後わずか18時間で24万台の返金不可注文を集めていました。SkyNomadの初月実績は大きな数字である一方、前年のYU7ほどの熱狂には届いていません。
また注文数はそのまま納車台数を意味しません。シャオミが9月に4万台超を納車し、そのうちSkyNomadが1万台だったと報じています。今後は受注を実際の納車に結びつけられるか、さらに新型車の投入や価格競争による利益への影響を抑えられるかが焦点になります。
シャオミが2027年に欧州市場へ進出する計画については、SkyNomadを欧米の高級SUVメーカーへの競争圧力になり得るモデルです。 一方で欧州での販売価格、現地の安全規制や認証、充電・整備網、ブランドへの信頼をどう整えるかは、今後の大きな課題です。
参考文献
[1] WIRED日本版「シャオミの新型SUV『SkyNomad』、欧米メーカーを揺さぶる価格と装備」
[2] Xiaomi Global「Xiaomi SkyNomad Family Unveiled」
[3] CarNewsChina「Xiaomi begins presales of Skynomad N70 and N90 crossovers」
[4] Reuters「Xiaomi to unveil prices for new YU7 SUV at June 26 launch」
[5] CNBC-TV18(Bloomberg )「Xiaomi shares jump 9.2% after SkyNomad SUV gets 70,000 orders in a month」
