古井貢酒~千年の歴史が育む白酒の香り~
9月26日、大阪・関西万博2025の中国館では、安徽省を代表する白酒メーカーである「古井貢酒 年份原漿」の企業イベントが行なわれました。同社は2010年の中国・上海万博から6回連続で出展しており、2012年の韓国・麗水万博からは中国館の公式パートナーとして、中国文化の発信と国際交流を推進しています。

中国安徽省亳州(はくしゅう)という地で生まれる古井貢酒は、中国を代表する名酒「白酒」の一つです。その名前に「古井(古い井戸)」と「貢酒(皇帝に献上する酒)」が含まれることからもわかるように、深い歴史と高い品格が最大の特徴です。今回はこの古井貢酒の魅力に迫るとともに、中国の奥深い白酒文化についても解説します。



歴史が刻まれた「貢ぎ酒」の由来
古井貢酒の歴史は、今から約1800年前の三国志時代にまでさかのぼります。当時、魏の曹操が漢の献帝にこの地の酒「九醞春酒(きゅううんしゅんしゅ)」とその醸造法を献上したという故事が始まりです。これが「貢酒」の由来となり、以来、歴代の皇帝へ献上される名酒としてその名を轟かせてきました。
そして、この酒の生命線となるのが「古井」です。亳州にある「減店(げんてん)集」という地には、南北朝時代の古戦場の跡があり、そこから見つかった井戸の水が、奇跡的に酒造りに最適な甘美な軟水であったのです。この井戸水は「天下名井」と称えられ、千年以上経った今も、古井貢酒醸造の心臓部として、琥珀色の液体に命を吹き込み続けています。
古井貢酒の魅力~香り・味わい・こだわり~
百花香る「香り」の芸術
古井貢酒は「濃香型(のうこうがた)」という白酒の分類に属します。これは華やかで芳醇な香りが特徴で、古井貢酒のそれは特に「まるで花びらが口の中でひらくような」と表現されるほど。この複雑で豊かな香りは、「香りがひとくち、味わいがもうひとくち」と言われる白酒の真髄を体現しています。グラスに注げば、ほのかな甘みを含んだ芳香が立ちのぼり、飲む前からその高貴さを感じさせます。
深みとまろやかさの調和「味わい」
一口含むと、まずはその芳醇な香りが口中に広がります。アルコール度数が高いため最初はピリッとしますが、すぐに驚くほどまろやかでコクのある味わいに変わります。ほのかな甘み、ふくよかな風味、そしてすっきりとした後味の良さが特徴で、「くせがなく、のどごしが良い」と高い評価を受けています。時間をかけてじっくりと味わうことで、その奥深い味の層を感じ取ることができるでしょう。
伝統を守る「醸造技法」のこだわり
古井貢酒は、国家無形文化遺産にも指定られている「桃花春曲(とうかしゅんきょく)」と呼ばれる伝統的な製法で造られます。これは、桃の花が咲き乱れる春の時期だけに「酒麹(しゅきく)」を作るという、自然のリズムを最大限に活かしたこだわりです。さらに、「明代の窖池(こうち)」と呼ばれる発酵槽は、数百年という長い年月の中で育まれた独自の微生物群が棲みついており、これが古井貢酒にしか出せない独特の風味を生み出す源泉となっています。

中国の白酒文化とは
古井貢酒を理解する上で、中国の「白酒文化」は欠かせません。白酒は単なるアルコール飲料ではなく、中国の社交、文化、歴史が凝縮されています。
- 乾杯の精神: 白酒の席では「乾杯(ガンべイ)」が重要な役割を果たします。これは「杯を乾す」という文字通り、一気に飲み干すことを意味し、相手に対する最大級の敬意と親愛の情を表します。ビジネスの場や結婚式、旧正月などの重要な宴席では、白酒がふるまわれることが多く、場を盛り上げ、人間関係を深める潤滑油となります。
- 料理とのペアリング: 油脂の多い中華料理、特に四川料理や湖南料理などの辛い料理と相性が抜群です。白酒の強いアルコールと豊かな風味が、料理の油っこさや辛さを洗い流し、口の中をリセットしてくれる役割を果たします。
- 時間をかけて楽しむ: 白酒は一気飲みだけの酒ではありません。特に古井貢酒のような高級白酒は、小さな杯(ちびつ)に注ぎ、香りを楽しみ、少しずつ舌で転がすようにして味わうのもオススメです。会話を楽しみながら時間をかけて飲むことが、その真価を引き出す秘訣です。
世界的白酒ブランド「古井貢酒」の本拠地
亳州市は、中国を代表する酒「白酒」の主要産地です。なかでも、この地から世界に羽ばたく超大ブランドが古井貢酒(こせいきょうしゅ) です。
亳州市の強みは、伝統産業に留まりません。同市は中国を代表する白酒の主要産地であり、中でも安徽古井貢酒股份有限公司は、中国白酒業界を代表する企業の一つです。
2024年、同社のブランド価値は3,757.56億元(約7.5兆円)と評価され、中国白酒ブランドにおいて第2位にランクインしました。この評価は、市場における同社の確固たる地位、歴史的・文化的価値、そして将来性に対する強い信頼を反映しています。
古井貢酒は1,800年以上の歴史を有し、独特の「濃香型」醸造技術で知られています。近年では国際的な品質コンテストでの受賞歴もあり、日本を含む海外市場への展開も本格化しています。
千年の時を超えて受け継がれた歴史、天然の恵みである名水、そして職人たちの絶え間ない努力が結晶した、中国が世界に誇る食文化の遺産である「古井貢酒」。三国志の曹操が皇帝に献上したように、最も大切な人や賓客をもてなす「最高の一品」として、今も愛され続けています。もし機会があれば、ぜひその芳醇な香りと深遠な味わいに触れてみてください。中国の長い歴史と文化の鼓動を、きっと感じ取っていただけることでしょう。
