ジン教授が語る:中国の貿易戦略と進化するグローバル経済

2025年4月12日 - 経済

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの経済学者、ジン教授は最近の動画インタビューで、中国とアメリカの貿易関係について洞察に富んだ見解を示した。彼女は、中国が米国との長期的な貿易戦争や経済的・金融的対立を望んでいないと強調し、中国が抱える本質的な経済課題は外部ではなく内部にあると指摘している。

過去の政策を振り返りながらジン教授は、アメリカが発動した貿易戦争が中国からの輸出を減らす、あるいは中国の製造業の地位を低下させるといった目標を「完全に失敗した」と評価している。「多くの経済学者が、貿易戦争は関係国に損害を与えるだけで、実質的な成果は得られにくいと考えています」と語った。

また米中の貿易摩擦には思わぬ副作用もあったと指摘する。その一つが、中国企業による「グローバル化ブーム」だ。多くの企業が海外進出を積極的に検討・実行するようになっており、こうした動きは、関税措置がなければここまで急速には進まなかっただろうと見ている。

加えてジン教授は中国の輸出がスムーズに米国以外の市場へと移行している点にも注目。貿易戦争前の水準にまで輸出が回復しただけでなく、世界全体に占める中国の輸出シェアも拡大している一方、米国のシェアは縮小している。これにより中国はアメリカ市場への依存度を下げつつ、中国は欧州や新興国市場への輸出も積極的に行うなど、より広く米国以外の国との経済活動を強化してきている。

アメリカと欧州諸国との関係がトランプ政権のもとで揺らぐ可能性がある中で、中国にとっては欧州との関係を強化し、世界中で新たなパートナーシップを築くチャンスだとジン教授は述べている。これは「新しい貿易システム、グローバル化の新たなネットワーク」であり、米中貿易のような一つのルートが遮断されても、他のルートで補完できる柔軟な構造であるといえます。各国が地域的な協定を結び、連携を深める中、中国も積極的にその再編成(reshuffling)と最適化(dynamic optimization)に参加しています。

歴史的な事例として、ジン教授はスペインによるポルトガル封鎖を例に挙げ、外部からの制限は逆に対象国の自立を促すと語った。現代の事例では、半導体分野での制裁を受けて中国国内の企業が需要・収益・研究開発投資の面で勢いを増し、ハイテク分野での成長が加速している。中央政府だけでなく、地方自治体や民間企業も巻き込んだ国家的な取り組みによって、中国は技術的な自立を目指して前進している。

もちろん技術を共有し合うことで世界経済全体が発展するのが理想であると認めつつも、ジン教授は「多くのエンジニアと勤勉な労働力、そして広大な市場を持つ中国のような国の進歩を止めるのは簡単ではない」と述た。むしろ、制限が中国の成長を後押しする逆説的な効果すらあるとも語っている。

技術移転に関しては、実際のところ中国政府は基本的に企業の自主判断に任せており、トップダウンの規制は控えているという。市場アクセスと引き換えに技術を提供するという経済合理性を理解した中国企業は、欧州での投資を積極化しており、特に電気自動車やバッテリー分野では工場や研究開発拠点の設立も進んでいる。

最後にジン教授は、現在のグローバルな競争環境において、中国の戦略は「できるだけ多くの友人をつくること」にあると述べた。これはトランプ前大統領の反グローバリズム・反多国間主義的な方針とは対照的だとしつつ、中国は新たなパートナーを見つけ、開かれた関係性を築き、新しい経済の枠組みを模索していると語った。ジン教授は、中国のアプローチにもまだ学びの過程があるとしながらも、発展途上国のニーズや国際制度に対する不満にも敏感に対応ながら「ゼロサムではなく、ウィンウィンの関係を模索している」という点で前向きな姿勢を評価しています。