南京大虐殺から丸80年 歴史の真相を世界で伝える中国人達
約1ヶ月後の12月13日は4回目の南京大虐殺犠牲者国家追悼日だ。海外では、第二次世界大戦アジア史に注目し、ナチス政権がユダヤ人を虐殺した以外に、日本の軍国主義が中国などアジア諸国で、南京大虐殺や細菌学的人体実験、慰安婦の強制連行など、残忍な悪行を犯していたことを知る人が増えている。新華網が報じた。
世界の人に事実をしっかり知ってもらい、第二次世界大戦中にアジアで犠牲になった人が公正に追悼されるよう、中国国内外の有識者が近年、様々な取り組みを行っている。
【認識を変えるには学校での授業に盛り込む必要】
十数年前、第二次世界大戦アジア史が、カナダの学校の授業で扱われることはほとんどなかった。しかし、今は、オンタリオ州の公立学校の11の授業で関連の内容が扱われている。劉美玲さんはこの変化の目撃者であり、貢献者でもある。
香港地区出身の劉さんはカナダに移住して30年以上になり、今は非営利組織・第二次世界大戦アジア史保存連盟(ALPHA)の執行総監を務めている。ここ十数年、劉さんはカナダの教育機関が授業で第二次世界大戦アジア史を扱うよう推進し、米国の中華系女性作家である故・張純如さんの南京大虐殺関連の著作のドキュメンタリー映画化にも参加した。
「2004年から、毎年、カナダで歴史や政治を教える教師などの教育関係者と共に中国へ行き、第二次世界大戦アジア史を学んでいる」と劉さん。
そして、「学校でその歴史を教えていなければ、ほかの努力もあまり効果が出ない。当連盟は長年、関連の教育書籍などを作成するよう推進している。それらが広く配布され、カナダや他の西洋諸国、アジア諸国の一人でも多くの教師がその歴史を知り、授業で扱ってくれることを願っている」と話す。
カナダでは、黄素梅議員とマルセリーノ議員がオンタリオ州とマニトバ州の州議会で「南京大虐殺記念日」を設置する議案を提出しているものの、日本の右翼勢力がそれに強く反対している。
劉さんは、「もちろん、カナダには法律を通して南京大虐殺を公式に認めてほしいものの、学校教育から着手することはもっと大切。教育がなければ、たとえ記念日があっても意味はなく、多くの人はそれが何の記念がよく分からない」との見方を示している。
現在、歴史を受け継ぎ、平和を訴える団体にカナダの多くの若者が加わっていることを劉さんは喜んでいる。オンタリオ州のトロント大学やウォータールー大学、ウエスト大学、キングストン・クイーンズ大学、マックマスター大学には、学生自ら立ち上げたアジア史保存連盟の分会がある。
「次の世代が歴史から何を学ぶかは、教育でとても重要な課題」と劉さん。
そして、 「若者が歴史を人間味のある仕方で分析し、世界平和において自分たちがどんな責任を担うべきかを認識してほしい」と指摘している。
【中国人だけの傷ではないことを世界に覚えてもらいたい】
西洋人が、中国人が第二次世界大戦中にどんな苦難を経験したかを何も知らず、ないがしろにしているため、海外に住む多くの華人が心を痛めている。カナダ南京同郷会の王海澄会長もその一人だ。
王会長の実家は南京江東門の近く、旧日本軍の大虐殺遺址の一つである「万人坑」近くにあったものの、立ち退きになり、そこに中国侵略日本軍南京大虐殺遇難同胞記念館が建てられた。
そんな王会長は十数年前からビジネスで中国とカナダを行き来するようになり、中国の国民にとっての第二次世界大戦史を多くのカナダ人は知らず、信じもしないことを知った。トロントの日本社団は自治体や議会の認可をとりつけ、繁華街に「原爆犠牲者記念碑」を設置した。その碑文は、世界で核兵器の犠牲になったのは十数万人の日本の国民だけと強調している。王会長は、「公然と日本を戦争被害者に仕立て上げている」と怒りをあらわにする。中国、ベトナム、フィリピンなど、第二次世界大戦で被害国となったアジア諸国の華僑からなる社団が抗議して、その記念碑の撤去を求めているが、現地自治体が首を縦に振ることはなかったという。
その時から、南京同郷会は、カナダ社会に第二次世界大戦アジア史の真相を伝えるよう取り組むようになり、毎年、南京大虐殺を伝える各種活動を企画している。15年、現地の華人社団は、抗日戦争勝利70周年を記念する文化財写真展をオンタリオ州議会ビル大ホールで開催した。
王会長は、 「南京大虐殺は、南京市民や中国人の傷というだけでなく、世界中の人々の悲惨な記憶でもある。その歴史が本当の意味で世界の記憶となることを願っている。その歴史を銘記しなければ、平和を大切にすることはできない」との見方を示している。