NVIDIAのジェンセン・フアンCEO、中国との協力継続を強調しつつ米国の半導体規制に異議

NVIDIAの創業者兼CEOであり、台湾系アメリカ人のジェンセン・フアン氏が、中国市場への関与を強化する姿勢を示す一方で、トランプ政権下で強化された対中半導体輸出規制に対して強い懸念を表明している。

北京訪問で協力継続を約束

4月17日、フアン氏は中国国際貿易促進委員会の任鴻斌主席と北京で会談した。これはフアン氏にとって3ヶ月で2回目の北京訪問となる。会談の中で、ファン氏は「中国はNVIDIAにとって重要な市場である」と強調し、協力関係の継続に期待を表明した。

フアン氏によれば、NVIDIAは25年以上にわたって中国で事業を展開しており、現在は北京、上海、深センなど複数の都市に支社を構え、4,000人以上の従業員を雇用している。同社の中国における従業員の年間離職率はわずか0.9%と、中国国内でも最も低い水準を維持している。

「現在、中国には150万人以上のCUDA開発者がおり、3,000社以上のスタートアップ企業と協力して中国のテック産業の成長を促進しています」とファン氏は述べた。

米国の半導体規制に「深く痛ましい」と反論

一方、5月19日に台北で開催されたComputex 2025での基調講演では、ファン氏は新しいAIスーパーコンピュータを発表し、「10年以内にAIがあらゆるものに組み込まれるようになる」と予測した。しかし、中国で最も注目を集めたのは、米国による対中半導体輸出規制に関するフアン氏の見解だった。

フアン氏は、事実上H20チップの中国への輸出を禁止する新たな規制について、その根拠に反論。これを「深く痛ましい」と表現し、半導体輸出規制によって中国のAI開発を抑制しようとする試みは「深く無知である」と主張した。

NVIDIAが「AIインフラ」企業としての再定義を図る中、フアン氏は米国企業が中国市場で競争する必要性を強調した。彼は、米国企業が中国のAIインフラ構築に関与せず、中国が「アメリカの参加なしに豊かなエコシステムを構築する」ことを許せば、中国がリーダーシップを握り、彼らの技術を「世界中に広める」ことになると指摘した。

「世界のAI研究者の50%は中国人」

フアン氏は特に注目すべき発言として、「世界のAI研究者の50%は中国人であり、彼らの進歩を阻止したり、AIの発展を止めたりすることはできない」と述べた。この発言と、中国のAIモデル「DeepSeek R1」を「世界クラス」で「世界のAI産業への真の贈り物」と評価した言葉は、中国のメディアで広く引用されている。

「AIが急速に世界の状況を変えつつある中で、AIは私たちの時代で最も変革的な基幹技術になる可能性があり、産業全体の進歩を促進する広範な可能性を秘めています。この分野での協力は、グローバル市場の構造に深い影響を与える可能性があります」とフアン氏は以前のインタビューで語っている。

規制下でも進む中国のAI開発

フアン氏がこのような見解を表明した背景には、150億ドル(約2兆2,500億円)の売上損失の可能性があることは間違いないが、競争に関する彼の指摘は依然として有効だ。DeepSeekモデルのようなオープンソースの中国のAIブレークスルーは、既存の規制下で開発されたからこそ、西側諸国を驚かせている。

フアン氏はまた、規制によって中国の研究者や企業がより革新的になり、生き残るために創意工夫を凝らすようになったという考えを示した。ファーウェイやアリババなどの中国企業がすでに独自のAIインフラを構築している中、米国のAI覇権は、少なくとも保護主義によって維持することは難しくなっている。

NVIDIAの中国市場への継続的な関与と、米国の規制政策に対するフアン氏の公然とした批判は、グローバルなAI開発競争と地政学的緊張の狭間で、テクノロジー企業が直面する複雑な立場を浮き彫りにしている。

      

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